子育てのとき
新しい旅 ~スリランカ マジック (1)~
"Excuse me, Ms. Suzuki, Please..."
アーナンダ仏教大学の講堂に座っている間、何度後ろから声をかけられたことでしょう。
マジックショーの準備にアクシデントがあったらしく、開演予定が大幅に遅れています。でも、アジアの国々では特に珍しいことでもないので、我々も観客もさして混乱することもなく待っています。
けれども、日本から来た私は、子どもたちにとってはとても珍しいらしく、何度も何度も声をかけてきます。「名前を書いて」「住所を教えて」などはよくあることですが、自分の大切なおやつの菓子パンをくれると言ったり、配られたパックの飲み物をくれると言ったり・・・。みんな大歓迎です。小学校3年生の男の子が、車の写真のついたカードを2枚差し出して、どうしても受け取ってくれといいます。大切なカードでしょうに。
中学校、高校で教員をしていた私には、この年頃の男の子たちはとても懐かしく、話すのはとても楽しいことでした。少年たちのきらきら輝く瞳、率直なもの言い、年長者が年少者を自然な形で世話する様子、先生方が入ってくるとさっと席を立って礼をつくすさっぱりとした態度・・・。いつの間にか、日本の学校から消えてしまった子どもたちの表情がそこにはありました。
考えてみれば、私は、本当に突然にこのツアーに参加したのです。長年お世話になっている絵の先生が、現地の学校や幼稚園の先生方に絵を教えると伺って、お供することになりました。このツアーが、長年にわたって続けられてきたものであること、マジックショーを通じて文化交流をするという趣旨であるということは、後から伺いました。
リーダーのプレーマダーサ氏は、紛争で荒れ果てた国を救うのは、子どもたちであると熱く語り、何よりも子どもたちの教育を大切にしたいと私に話しました。学校はすべて国立で、幼稚園から高校まで、学費は無料。制服も教科書もすべて支給されるそうです。大学は本当にレベルが高く、真剣に学問をする優秀な人しか入れません。
「スリランカには、校内暴力はありません。学校の先生は、お坊さんと同じように、最高に尊敬されています。」と話してくれる言葉が、私の胸に突きささりました。
冒頭に述べたような現地の子どもたちや、教育者として意志を同じくする先生方とのふれあい、マジックショーをめぐるできごと、感動的な世界遺産との出会い・・・。この国で過ごした数日間が、私にもたらしてくれたものは、本当に大きかったと思います。スリランカはあらゆる意味で、「美しい」国だったのです。そして、今、私の前で、明るく真剣な表情でお話を聞いているベル・ナーサリーの子どもたちが、その成長と共に、ますますその輝きを増すように、教育に携わるものとしての責任を改めて感じる旅でもありました。
(2009.10.23掲載)
